第二試合 夏vs自分

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「すごい偶然だね。えっと……そういや名前聞いていなかったっけ。君は?」 「た、橘 陽葵(タチバナ ヒマリ)です……」 「橘さんか。俺は速水 瞬(ハヤミ シュン)。同じ地元民としてよろしく」  速水さんは目尻を下げて笑うと、「よかったら橘さんもどう?」とパンの入った紙袋を掲げながら手招きする。  突然の誘いに私は身体が静止する。 「あ、ごめん。練習の邪魔かな?」 「い、いえ、えっと、良いんですか?」 「うん。実はこのパン屋の看板娘と幼馴染でさ」  依都のようにクールで美人な看板娘さんの姿が思い浮かぶ。 「新作の感想聞かせてくれって言われてるんだけど、『瞬は美味いしか言わない』っていつも怒られるから、むしろ協力してくれると嬉しい」と速水さんは笑う。  地元民では知らない人がいないパン屋なだけに、新作が食べられることに心が躍った。  橋の下に降り、速水さんの元まで向かう。  紙袋から取り出されるパンはどれも黄金色に輝き、目から美味しいと伝わる。 「今回は夏向けらしくてフルーツのものが多いかな。でも俺はやっぱりこれが一番気になるな」  そう言ってカレーパンを手に取る。
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