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「カレーパンも改良されたんですか?」
「らしいよ。ただでさえウマいのに、夏向けにさらにレベルが上がったって」
モモヤマベーカリーのパン屋は、カレーパンが一番人気だった。
外はカリッカリに揚げられ、中のスパイスも絶妙な辛さでバランスが丁度いい。文句のつけようのない品であるが、更に改良されたとだけ期待が高まる。
「ほら、橘さんも」
そう言って速水さんは笑顔でカレーパンの入った袋を差し出す。
私は頭を下げながらそれを受け取る。
「温かい……!」
「さっき貰ってきたばかりの揚げたてだよ。中々食べたことないだろ」
「はい。いつもはお昼に食べるので……まさか揚げたてが食べられるなんて」
「幼馴染の特権。遠慮せずに食べてな」
速水さんは爽やかに手をひらひらさせると、パンの入った袋を開け始める。私も腰を下ろしてパンに齧りつく。
カリッと軽やかな音が鳴り、上質の油分の孕んだアツアツの生地を噛み締める。咀嚼するたびスパイスの効いたカレーの香りが充満し、幸せな満足感が訪れる。
冷めても美味しいものの、やはり揚げたてとなると味が格別に感じられるものだ。
「おいしい……!」
「ほんとウマいよなぁ。毎日食べても飽きないっていうか」
速水さんもカレーパンを口にしながら言う。
「本当……本当に美味しい…………温かいから尚更……」
本心から言葉にすると、速水さんは「やっぱ、『美味しい』しか言えないよな」と納得するように頷いた。
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