第二試合 夏vs自分

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「カレーパンも改良されたんですか?」 「らしいよ。ただでさえウマいのに、夏向けにさらにレベルが上がったって」    モモヤマベーカリーのパン屋は、カレーパンが一番人気だった。  外はカリッカリに揚げられ、中のスパイスも絶妙な辛さでバランスが丁度いい。文句のつけようのない品であるが、更に改良されたとだけ期待が高まる。 「ほら、橘さんも」  そう言って速水さんは笑顔でカレーパンの入った袋を差し出す。  私は頭を下げながらそれを受け取る。 「温かい……!」 「さっき貰ってきたばかりの揚げたてだよ。中々食べたことないだろ」 「はい。いつもはお昼に食べるので……まさか揚げたてが食べられるなんて」 「幼馴染の特権。遠慮せずに食べてな」  速水さんは爽やかに手をひらひらさせると、パンの入った袋を開け始める。私も腰を下ろしてパンに齧りつく。    カリッと軽やかな音が鳴り、上質の油分の孕んだアツアツの生地を噛み締める。咀嚼するたびスパイスの効いたカレーの香りが充満し、幸せな満足感が訪れる。  冷めても美味しいものの、やはり揚げたてとなると味が格別に感じられるものだ。 「おいしい……!」 「ほんとウマいよなぁ。毎日食べても飽きないっていうか」  速水さんもカレーパンを口にしながら言う。 「本当……本当に美味しい…………温かいから尚更……」  本心から言葉にすると、速水さんは「やっぱ、『美味しい』しか言えないよな」と納得するように頷いた。
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