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「今回の死因は何?」
教室内、机に突っ伏す私に、依都は冷静に声をかける。
出会って半年経ったことで、私の扱いにも慣れたのか、その声はもはや作業のように淡々としている。いや、彼女の場合はこれがデフォルトでもあるが。
私は無言で彼女に顔を向ける。
「前から思ってたんだけどさ、死因を被害者に尋ねるのっておかしくない? 探偵は推理するものでしょ」
「まだ息のあるうちは、被害者からの証言が一番有効になる」
ごもっとも。
私の頭の悪い軽口も、正当性を持ち出す彼女に敵うわけがない。
「何か……もう色々、ショックなんだよね…………」
私は観念して再び机にうなだれる。
そんな私を見て、「速水さんね」と名探偵依都は、あっさり見抜く。
「でもまだ確実じゃないんでしょ。それに陽葵だって、告白してないんだからわからないじゃん」
「告白なんて、できるわけ……!」無意識に声が大きくなる。
「まだわからないのに結果出すのも早いってこと。ただの妄想ほど信用できないものはないよ。まだ断られてないなら、少しでも株を上げてから砕けるべき」
「断られる前提ですか」ふてくされて唇を突き出す。
「基本的に後悔というものは、やらなかったことに対して起こることなのよ」
依都は整った目元を光らせながら答える。
しれっと話題を逸らされたが、もう気にしない。
「別に私は、付き合いたいわけじゃないし……」
「でも彼女がいてモヤモヤしてるじゃん。嫉妬しているのは、自分がそれを欲しいと思っているからだよ」
ハッキリと指摘されて口籠る。
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