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「例えばコインの裏表で決めるとして、表が出たのに残念に感じたらそれが答えなんだよ。自分の本当の感情を知るには、それこそ冷静に分析するしかない」
全くもって正論だ。
もはやここまで落ち着いて展開されると、爽快ですらある。
「だからこそ、まずは何よりも注目してもらうことが大事だよ。ちょうど二週間後にある体育祭の種目に、陽葵の得意とする分野があるんだから」
「私の得意な?」
「応援合戦」依都は心なし得意げな顔をして答える。
「速水さんは試合に集中していたんだから、陽葵の一生懸命応援する姿は見られていない。でも応援合戦は、応援している姿を見せる、応援がメインの種目なんだよ。だからこそチャンスじゃないのかな」
「そんな競技があるんだ……」
よく知ってるね、と言うと「保険体育委員だから」とあっさりと返答がある。
この学校を志望したのも、吹奏楽部に入部したのも、全部高校野球の応援の為だ。ここ半年近くも、全てその為に捧げてきた。
もし、その姿を少しでも見てもらえるのならば。
彼女の口車に乗せられているようで気が進まなかったが、これが現実を見ている違いなのだろう。
始業開始のベルが鳴ったことで、私たちは席に着いた。
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