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「私……やります」
じれったい空気が漂う中、私はおずおず挙手する。
「おお、橘やってくれるか……!」
面倒臭そうにしていた担任も、やっと進展したことで元気を取り戻す。
「あとは男子だな。希望いるか?」
「じゃ、俺」
そう言って、前座席の翔吏は手を上げる。
「翔吏?」
私は思わず声を上げる。
「勘違いすんな。秋季大会まで日はあるし、ちょうどいい息抜きになるだけだ。応援する側の気持ちも知っておくべきだろ」
翔吏は厳しい声で言う。
本当彼は、常に上しか目指していない。彼の中では、もう次のステージに向かっているんだ。
それだけに、速水さんを思うと胸が痛んだ。
今の私にとったら、良い気晴らしになるはずだ。
応援合戦は、三学年合同で行われる。一年生は三年生の指示に従うだけなので、ほぼ部活動と変わらない状況だ。
厳しい環境で鍛えられているだけ、特に年上の人にも構えることなく準備を進めていた。
ほぼ毎日集まりがあるものの、二週間という期間であるだけ、むしろ短いとすら感じるほどだった。
だがある日、想定外のことが起こる。
***
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