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「ぶっさいくな顔」
近くまで来た野中 翔吏(ノナカ ショウリ)は、私の顔を見て吐き捨てる。
眉の吊り上がった鋭い目つきに、無駄のない顎ラインからも、体格以上の気迫が感じられた。
先ほどまでの感情の高ぶりが、一気に急降下した。
「…………かわいい顔を維持する体力がないだけです~」
私はやけくそに唇を突き出す。
「元が良いみたいな言い方はよそうぜ。虚しいぞ」
「うるさいな。貴重な休憩時間を邪魔しないでよ」
「そんなこと言われても、俺の席、ここだし」
そう言って翔吏は、依都の座っている席を指差す。
「あぁ、ごめんね。勝手に座って」
依都は特に動じずに腰を上げる。
「別に。昼休みはミーティングだし」
翔吏もあっさりと返答する。
依都は表情豊かではないものの、整った顔立ちに冷静な態度からも大人に感じられる。
とはいえ、私との態度の差が歴然で不愉快だ。
目前の大きな背中を拳で叩きたくなる衝動に駆られるがグッと耐える。
悶々とした感情のまま、午後の授業が開始した。
***
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