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「…驚かせて、ごめんなさい」
「いや、全然!こっちこそ邪魔してごめん!」
「…あの、私、ぶつかった?」
「え…あっ、違う!俺が鞄開けっぱなしだったからずり落ちて!本当に!1ミリも当たってないから!」
私の言葉を聞いて焦ったように否定してくれた彼に、安心して少し息を吐いた。
拾い集めたものを少し揃えてから、数冊のノートを拾ってから動かなかった彼に渡す。
「拾ってくれてありがとう!」
「いえ……あの、腕は」
「腕?…あ、これ?」
「うん…大丈夫だった?今ので、痛くなったりとか」
包帯が巻かれた右腕を前に出して見せた彼に小さく頷いた。ケガの具合がどんなものか知らないけれど、小さな衝撃とかでも障ったりしないかなって心配になったのだ。
「全然!大丈夫だよ。そんな酷くもないし」
「そ、か」
「……あのさ、藤崎って」
「!」
ほっと安心したのも束の間、少し間を空けて彼は私の名前を呼んだ。突然のことに驚いてびくりと肩を揺らす。
何を言われるのか分からなくて、それがとても怖くて、彼の言葉を遮るように慌てて立ち上がる。
「わっ、どした?」
「………でください」
「え?」
「さっきのこと、誰にも言わないでください!」
「えっ、あ、ちょっと待って!」
私を引き止める彼の声を無視して駆け出した。今度はもう止まらないし振り返らない。靴箱までの道を必死に走り抜けた。
態度悪かったかな。頭の端でちらっとそう思ったけれどこれ以上は無理だった。ごめんなさい、ごめんなさい。心の中で何度も謝るけどそんなことで罪悪感は消えなくて目頭が熱くなる。
そんな情けない自分に気づかないフリをして、無我夢中で走った。
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