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「まぁ、まだそうと決まったわけではないんですが……」
錫川刑事は歯切れが悪い。だいたい放火殺人の場合、火事はあくまで証拠隠滅の手段として行われる。すでに被害者を殺すか動けなくしてから建物に火を放つ。寝ている間に放火する、という手もあるが、いずれにしても残酷な犯行だ。かなりの恨みをいだいての犯行かもしれないし、放火強盗殺人という可能性もあった。
むろん、すべての放火事件が殺人と関連があるわけではない。単なる愉快犯である可能性のほうが、実は高い。その場合はボヤで終わることが多いが。
「交友関係のほかに、被害者の俵本さんの身辺で、なにか不審者を目撃したりしませんでしたか?」
しかし警察としてはすべての可能性を洗っていかなければならない。なにせ人が死んでいるのだから。きちんと事実関係を調べ、放火犯がいたなら検挙しなければならない。犯人につながる情報は少しでも欲しい。
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