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それでも先野の話をメモした二人の刑事は、ご協力ありがとうございました、と礼を言って帰っていった。被害者・俵本衣緒の交友関係といっても、さほどたいした情報はなかった。すでに警察でも調べがついていることばかりかもしれない。
先野の情報が事件解決にどの程度寄与するものか――。おそらくあまり有用ではなかっただろう。
しかしこういう地味な捜査の積み重ねが、事件の真相に近づく手段であるのは間違いない。
そこは探偵と同様だ。先野は、炎天下に出て行く刑事を見送り、その苦労がよく理解できていた。一日も早い事件解決が望まれるところである。
ところが、刑事が訪ねてきた翌日――。
その日、先野にはひとつの案件が新たに入っていた。
事務所の外には、パーティションでいくつもに区切られた面談コーナーがあり、新・土井エージェントを訪れた客はそこで担当する探偵に依頼内容を話すようになっていた。
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