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「と、おっしゃいますと……?」
先野が水を向けると、
「そうなんですの。また、夫の浮気相手がどこの馬の骨なのか、調べてほしいんです」
浮気の相手が一人だけではない場合はけして少なくない。なんにんもの女と同時につきあう離れ業をやってのけるツワモノもけっこういるのである。女に向けるパワーはすさまじく、そのためだけに生きているような男。そこまでいくと尊敬すらしてしまう。
千咲の夫――外井涼雅は、そういう才を持った男なのだ。
「わかりました。では、またわたくしが調査をいたします」
「頼みましたわよ」
二回目、しかもひと月前に調査をしたばかりで、要領はわかっていた。夫の勤め先も、趣味も、すべてわかっていた。打ち合わせることはなにもない。
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