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(あのことは知っているのだろうか……?)
以前と態度の変わらない依頼者に、先野は気になって訊いてみた。
「あの、ご存知でしょうか。前回調査したときのご主人の浮気相手が火事で亡くなったことを……」
「そのことですか。存じております。わたしのところにも警察が来ましたもの。天罰が下ったんですわ。同情する気にもなりませんわ。むしろ、犯人に疑われたこっちが迷惑していますの」
「疑われたって……」
「夫かわたしが、殺したんじゃないかって……。まったく、なんの証拠があって……。もっとも、証拠がないから逮捕されないんですけど」
「それは……災難でしたね」
「では、頼みましたよ」
話は終わったとばかりに、席を立つ千咲。
「はい、おまかせください」
出て行く背中に向けて、先野は力強く言った。
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