刑事と探偵

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 事務所には、オープンスペースの会議コーナーの他に、機密性が守られる会議室もあった。 「こちらで少しお待ちくださいませ」  外見はどうあれ、事務所所属の探偵たちの仕事の進捗からスケジュールを調整して人員を割り振るマネージャーは、社員からは信頼されていた。 「ちょっといいかしら?」  その優秀なマネージャーが向かった先にいたのは、白い上下のスーツを着込んだ探偵だった。室内にもかかわらずソフト帽をかぶり、もう午後だというのにデスクに広げた朝刊を読んでいた。 「なんだい? 仕事かい? おれはいまいつでも出られるぜ」  スタンバイ完了、というより、目下やることがない状況の先野光介(さきのこうすけ)は、待ってましたとばかりに顔をあげる。  マネージャーの腕をもってしても、三十後半のこの男をフル稼働させることができないでいた。仕事は真面目に取り組んでくれるし、能力が極端に低いというわけではないのだが、どういうわけか案件が入らない。
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