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「たぶんどこかで会ってるんでしょう」
若干の皮肉を込めて答えた。もしかしたらどこかで職務質問をされていたかもしれなかった。なかなか特徴的な顔の先野であったが、その上、上下白のスーツを着ているとなれば、怪しい、を絵に描いたようであった。先野が事務所内だけの限定ファッションをなぜしているのかは同僚の誰も訊かないし、謎のままだった。いまやそれは誰も気にしない風景になってしまっていたが、慣れない人にとってみれば疑問をいだかずにはいられない。
「ま、お話は、麦茶を飲みながらどうぞ」
「はい、いただきます」
刑事二人はやっと露のついたグラスを手に取り、麦茶をのどに流し込んだ。
「で、私に聞きたいことというのは……?」
「俵本衣緒さん、という名前に聞き覚えはありますか?」
手帳を開き、パンチパーマの錫川刑事が尋ねる。
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