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やはりあの案件か、と先野は口のなかでつぶやく。夫の浮気調査をしてほしいという妻の依頼で、先野が担当した。そして調べた結果、その浮気相手というのが俵本衣緒という名前の女だった。
年齢は二十九歳。アパートで一人暮らし。コンピューターソフトウェアの会社でOLをしていて、入社五年目。不倫は半年ほど前からで、知り合ったのはマッチングアプリだ。男のほうから近づいてきた。
「はい、存じていますよ。ひと月ほど前に調査しました。その人がなにか……?」
「火事で亡くなったんです」
若い関浦刑事が言った。
実は先野は知っていた。火事の記事が新聞の片隅に載っていて、死亡したのがその俵本衣緒だということを。
「はぁ……それで?」
まだ若いのに不倫の泥沼にはまったうえに焼死してしまうなんて、幸薄い女性であった。
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