act.1  冷たい目の転校生

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 * * * * * * * * * *  春休みも終わり、学年も変わって数日が経った頃、このクラスに時季外れの転校生がやってきた。    うちみたいな男ばかりの高校でも、転校生というのは皆の興味を一身に受けるものだが、その生徒を見た時、クラス全員の顔が一瞬強張ったのが目に見えてわかるほど、彼の第一印象は強烈だったのを覚えている。  背はこの歳の男子の平均よりは高そうに見え(少なくとも俺よりは身長があるだろう)肌が白く、それが彼の明るい色の髪を益々目立たせていた。  痩せてシャープな輪郭に、並外れて整った作りの顔は冷たさを感じるほどで、特に切れ長の伏せ目がちにしているその目は、どこか禁欲的(ストイック)な雰囲気を漂わせているようにさえ思えた。  あの時、なぜか遠く冷めた目をしたその生徒を、意識しなかった人がいただろうか――。  しばらく彼のことを見ていて、ふと俺は、自分の隣が空席であることに気付いた。 (まさか、ここに座るんじゃ……)  そう思った時、すでに担任はそこに着席するよう指示していたように思う。俺はその生徒が自分の隣に座ることに、何かしら一種の不安感をもち緊張した。    彼は無表情のまま近づいて来ると、俺を一瞥(いちべつ)してそのまま席に着いた。  その時、今までの誰とも違うまったく新しいその人の匂いを感じて、益々緊張してしまった俺は、皆の露骨な好奇の目も気にせず窓の外を見ていた彼より、よっぽど転校生らしかったのではなかっただろうか。  その日、教壇で名前だけの挨拶をした転校生が、成瀬 勇だった。  その彼が俺――如月(きさらぎ)(みなと)にとって、忘れられない存在になることを、この日の俺はまだ知らずにいた。  * * * * * * * * * *
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