世界で一番の幸せを

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それから駅前の小さな喫茶店で遅めのお昼を食べた 私達は、海へと向かった。 急なことだったから水着はないし、まだ夏休み前 だからお店も何もない。 それでもよかった。 ただ、隣に彼が居てくれればそれで。 「暑いな。」 「もう夏だからね。」 二人して靴を脱ぎ捨てて、砂浜をゆっくり歩く。 波打ち際は波が寄せて返す。 その度に足に水がかかってその冷たさが気持ち いい。 少し先を歩く彼が振り返りざまに水を蹴り上げた。 「っちょっと」 「はははっ」 「スカートが濡れちゃったじゃん。」 制服のスカートを持ち上げながら抗議したけど、全く反省はしていないらしい。 むしろしてやったりな顔をしてる。 お返しにと、私も手で水を弾いた。 「おいっ」 彼の制服のズボンの捲っていた端が濡れる。 これでおあいこだ。 もう一度水を弾こうとしたら、バランスを崩して 足元がぐらついた。 よろけた私の手を彼がとってくれる。 その手は温かかった。 「大丈夫か?」 「ありがとう。」 数日前のロアとのやりとりを思い出す。 あの日一人じゃなくてよかったと思ったけど やっぱり二人の方がずっといい。 圭と一緒なのがいい。 ふいにグッと手をひかれて引き寄せられた。 行きついいた先は彼の胸の中。 そのままもう片方の手が私の腰に回る。 顔を上げれば視線が交わった。
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