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ただ、座っている体勢では決してあり得ない方向から見える、アリスフィリアの足先を見つめながら、薄れゆく意識の中で彼女の最後の言葉を聞いた。
「でもごめんなさい。私を愛したあなたに……もう興味がないの」
*
アリスフィリアは、床に転がる勇者の頭を見つめていた。少し遅れて、頭部を失った身体が崩れ落ちるように床に倒れる。
彼女が彼の首を刎ねたのだ。
しかし不思議なことに、切り離された頭部からも身体からも一滴も血が出ていない。
アリスフィリアは鼻歌を歌いながら、転がっている頭を手に取り、うなじ部分を見た。
そこに書かれている数字を読み上げる。
「ふうん『102』か。ってことは、お名前は102号さんね?」
誰に聞かせることなく呟くと、女の細腕で運ぶには大変そうな彼の身体を、ずりずりと引きずっていく。
彼女がやって来たのは、寝室の奥にある大きな扉だった。
アリスフィリアは右手で勇者の頭部を抱えながら、左手で彼の身体を引きずり、扉の向こうにある長い階段を下りていく。
階段の先にあったのは、魔力の水で満たされた大きな水槽。
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