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アリスフィリアが指を鳴らすと、魔物たちが人間たちを蹂躙する光景が映像として映し出された。
彼女がふっと息を吹きかけると、映っていた魔物たちの姿が瞬時に消滅する。
「今この瞬間、魔物は全て消したわ。これで、誰一人傷つくことはない」
勇者が外の景色を見たいと告げると、アリスフィリアは彼を城の屋上へと転移させた。
先ほどまで真っ黒だった大地が、美しい緑と土の色で一面覆われているのを見た時、魔王の言葉が真実だと知る。
彼も分かっていた。
正攻法ではアリスフィリアを倒せないことを。
後ろに彼女の気配を感じながら、勇者は悔しさを押し隠すように低く呟いた。
「……俺はお前の命を狙い続ける。お前を愛することなど決してない」
「ええ、それでいいわ」
彼女の嬉しそうな返答を聞いた瞬間、勇者は握っていたスタンドライトを地面に放り投げた。
*
勇者は宣言通り、隙を見てはアリスフィリアの命を狙った。
しかし、隙をついても魔王は手ごわく、あっけなく退けられてしまう。
一方、毎日命を狙われているのにもかかわらず、アリスフィリアの態度は変わらなかった。
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