魔王アリスフィリアと愛憎の勇者

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 少女のような屈託のない笑顔を常に彼へと向け、今日はこれがしたい、今日はあそこに一緒に行きたい、と本当の恋人のように付きまとってくる。  例え一刻前、彼に腹を貫かれ、血まみれになっていたとしても、愛おしそうに彼の髪を撫で、頬に触れ、彼から憎しみのこもった視線を向けられると頬を赤くして俯くのだ。 (あれほどの力なら、俺など簡単に殺せるはず。それなのに、初めに交わした約束を律儀に守っているなんて……本気なのか?)   花畑の中でサンドイッチを頬張るアリスフィリアの横顔を盗み見ながら思う。  頬にパンの欠片をつけながら食べる姿は、ただの無害な女性にしか見えない。彼の視線に気づいたのか、アリスフィリアの瞳が向けられた。  自分に常に命を狙われている者とは思えない、幸せそうに緩んだ目元。  この表情を向けられると、何故か心の奥が落ち着かなくなる。  どこかで同じ顔を、同じ想いをした気がする。  記憶にはないはずなのに。 (俺は魔王を殺し……世界に平和をもたらす存在のはず……なのに……)  頬に上がってくる熱量に戸惑いながら、手に握っていたサンドイッチを握りつぶした。
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