13人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
*
「ねえ、何で最近私を殺そうとしないの?」
乱れたシーツの上で、アリスフィリアが尋ねた。
勇者である彼がアリスフィリアとともに過ごすようになってから、どれだけ時間が過ぎただろう。
自分の気持ちも、
彼女への気持ちも、
全てが分からなくなっていた。
首筋に赤い痕をつけた彼女が、彼を覗き込む。
アリスフィリアの問いに、罪悪感が心一杯に広がった。喉の奥が詰まって言葉が出ない。
勇者は身体を起こすと脱ぎ捨てていた服を引っ掴み、ベッドから下りて着替えだした。
「どうしたの? ねえ?」
服を着ながら、アリスフィリアが再び問う。
心に留めておけなくなった罪悪感が、言葉となって勇者の口から零れだした。
「……お前を愛してしまった……かもしれない」
「え?」
息を飲む音と短く漏れた驚きの声。
勇者が振り返ると、大きく瞳を見開くアリスフィリアの姿があった。
(驚くのも無理はない……)
自分は、彼女を決して愛さないと公言していたのだから。
今まで秘めていた想いが、言葉の洪水となって吐き出される。
最初のコメントを投稿しよう!