魔王アリスフィリアと愛憎の勇者

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 * 「ねえ、何で最近私を殺そうとしないの?」  乱れたシーツの上で、アリスフィリアが尋ねた。  勇者である彼がアリスフィリアとともに過ごすようになってから、どれだけ時間が過ぎただろう。  自分の気持ちも、  彼女への気持ちも、  全てが分からなくなっていた。  首筋に赤い痕をつけた彼女が、彼を覗き込む。  アリスフィリアの問いに、罪悪感が心一杯に広がった。喉の奥が詰まって言葉が出ない。  勇者は身体を起こすと脱ぎ捨てていた服を引っ掴み、ベッドから下りて着替えだした。 「どうしたの? ねえ?」  服を着ながら、アリスフィリアが再び問う。  心に留めておけなくなった罪悪感が、言葉となって勇者の口から零れだした。 「……お前を愛してしまった……かもしれない」 「え?」  息を飲む音と短く漏れた驚きの声。  勇者が振り返ると、大きく瞳を見開くアリスフィリアの姿があった。 (驚くのも無理はない……)  自分は、彼女を決して愛さないと公言していたのだから。  今まで秘めていた想いが、言葉の洪水となって吐き出される。
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