魔王アリスフィリアと愛憎の勇者

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 それが、 『魔王アリスフィリアは彼女を憎む勇者に恋をしている間、決して彼を殺さない』  恐らく聖女アリスが最期の抵抗にかけた、魔王への制約だったのだろう。  最期の最後まで、彼女はこの世界のために力を尽くしたのだ。    アリスフィリアと対峙後、《彼》の身体にも変化が起こっていた。  彼の肉体は老いることなく、さらに切り離された肉体の一部を適切に培養すれば、彼の複製を作ることが出来るようになっていたのだ。  勇者としての力を持つ者は、この世界で《彼》一人。  《彼》を失えば、もはや世界の滅亡が決まったのと同じ。  だから《彼》は、この呪いをアリスからのギフトだと思った。  《彼》の複製を作り、  魔王アリスフィリアに送り込み、殺すためのギフトだと―― 「勇者様、準備ができました。今から記憶継承の儀を始めます」  《彼》を呼ぶ声が聞こえたのと同時に、映像を消し去った。  そして、先ほどの女性が差し出したヘルメットを受け取り被る。ヘルメットのてっぺんには、《彼》の記憶を複製に移すために作られた魔法石がつけられていた。  複製は《彼》と同じ能力と容姿を有している。
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