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その腕の中には、彼女が『102号』と呼んでいた勇者の頭部が抱きしめられていた。
懐かしくて、切なくて、少しだけ辛い――
そんな気持ちを振り払うように、アリスフィリアは抱きしめていた勇者の頭部を自分の前に掲げた。瞼は閉じられたそれが彼女を見つめ返すことはない。
アリスフィリアは満足そうに笑う。
しかし笑みはすぐに消え、目の前の勇者の亡骸を泣きそうな表情で見つめる
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
呪文のように繰り返される謝罪の言葉。
それが止まったと同時に、彼女の目尻から一筋の涙が零れた。
震える唇がそっと言葉を紡ぐ
「どうか……私を愛さないで……どうか私を……憎んで……どうかわたし……を……」
――殺して。
冷たく硬くなった彼の唇に、彼女の温かい唇が触れた。
次の瞬間、
「あれ? 私、何で泣いているんだろ?」
泣きそうだった表情は消え、不思議そうに涙を拭う魔王がいた。
しかしすぐさま先ほどの笑みに戻ると、残酷な光を瞳に宿しながら世界を見下ろしていた。
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