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勇者である彼が身体にかけている防御魔法に気づいたアリスフィリアが、細い瞳をさらに細める。
「その防御魔法、私たちと同じ闇魔法か。光の存在である勇者が、我々がもたらした闇魔法まで習得していると知られれば、人間たちはどう思うかな?」
「……それでお前を倒せるなら、俺は喜んで堕ちてやるよ」
闇魔法は、魔王や魔物のみが使う邪法。
しかし、魔王を倒すのに手段を選んでいられない。
勇者は剣を構えた。
茶色の瞳が美しき女魔王を映した時、生まれ育った村がアリスフィリアと魔物たちによって焼かれ、家族や友人たちが弄ばれ、殺される光景が思い出された。
助けが間に合わず、奴らに滅ぼされた町や村の前で、何度悔し涙を流したか分からない。
彼の双眸が、憎しみと怒りで赤く染まった。
「今日こそお前を倒し、この世界を返してもらうぞ!」
叫んだ瞬間、彼の身体は魔王の背後にあった。
魔力はアリスフィリアの方が格段に多い。そのため、出し惜しみせずに初手の一撃で決める作戦だったのだ。
勇者が持ち得る、ありとあらゆる力がこめられた一太刀が、アリスフィリアの首元を狙う。
しかし、
「なっ⁉」
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