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勇者の瞳から一瞬、憎しみも怒りも消えた。
それほど魔王の言葉は、彼の思考を一時停止してしまうほどのインパクトがあったらしい。
しかし理由を聞く前に、アリスフィリアの唇が動いた。
次の瞬間、彼の意識は真っ白に染まり、何も考えられなくなってしまった。
*
アリスフィリアの寝室。
広いベッドの上に横たわって眠る青年の横に、彼女の姿があった。
さっきから勇者の顔を覗きこんでは、真っ赤になった頬を両手で覆う、という行動を繰り返している。
そして、
(ああっ! さっき「お前が勇者か」なんて、さも初対面みたいな発言しちゃったけど、実は勇者だと発表された時にあなたを見て一目惚れしちゃいましたって言ったら引かれるかな? ずっと偵察用の使い魔を彼の傍に常駐させてて、あなたを見てましたっていったらドン引きされるかな⁉)
という謎の心配をしていた。
魔王としてこの世界の頂点に君臨するアリスフィリアは、恋をしていた。
勇者という存在が人々にお披露目された時、彼を殺そうとやって来たアリスフィリアだったが、彼の姿を一目見た瞬間、恋に落ちてしまったのだ。
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