魔王アリスフィリアと愛憎の勇者

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 少しクセのある茶色い髪。顔が小さめだからか、二重の瞳が大きく見える。あれだけ戦い続けたというのに、肌は荒れ一つなく白い。少しこけた頬がなければ、青年というよりも少年に見える幼さがあった。  しかし身体は勇者の名にふさわしく、しっかりと鍛えられている。彼の鎧を外した時、彼女の手を押し返すような筋肉を思い出し、アリスフィリアはまた顔を赤くした。 (あの憎しみのこもった目が凄く好き。私を絶対に殺す、と宣言したあの声も……それに人間でありながら、闇魔法まで習得しているなんて、闇堕ちしてでも私を殺したいってことよね? それだけ私のことで頭が一杯ってことよね? ……はっ! これはもう……両想いってこと⁉)  キャーと小さく悲鳴をあげ、じたばたした瞬間、身じろぎとともに勇者が目を覚ました。  状況が把握できず呆然と天井を見つめていた茶色い瞳が、はっと正気を取り戻し、素早く身体を起こして周囲を見回す。そして、同じベッドの上にいるアリスフィリアの姿を捉えると、反射的と言ってもいい程のスピードでベッドから下り、近くにあった魔法で輝くスタンドライトを彼女に突き付けた。
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