魔王アリスフィリアと愛憎の勇者

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「何故殺さなかった? 生かしておいて、人間たちの前で俺を嬲り殺すのか?」  勇者が低く問う。  アリスフィリアは動じない。黙って勇者を見つめ返す。  内心、 (ああ、やっぱり素敵っ! 今にも私を射殺そうと言わんばかりの、あの憎しみのこもった瞳……それに、私に敵わないと分かっていながらも、屈しない強い意志……ああ、いいっ! めっちゃいいっ!) など考えているなど、勇者は欠片も思っていないだろう。    何も反応を見せない魔王に業を煮やしたのか、勇者が攻撃するために動こうとした。その瞬間、 「ま、待って! 私はあなたと戦う意思はないのっ!」  アリスフィリアが両手を突き出して彼の動きを制した。 「私、勇者のお披露目の際に、あなたを一目見た時からずっと好きだったの! だから、私と一緒にいてくれませんか⁉」 「……俺をからかっているのか? 仮に本当であっても、この世界を滅茶苦茶にし、俺の家族や大切な人々を殺したお前を俺が愛するわけがないだろっ!」
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