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スタンドライトを構えながら、勇者は唸り声に近い声色で答えた。もちろん、その瞳には、アリスフィリアの言葉を欠片も信じている様子は見られない。
それが悲しくて、虹色の瞳が涙で潤んだ。両手を胸の前で握るとフルフルと首を横に振る。
「それでもいいの」
「そう言いながら、お前は隙を見て俺を殺すつもりだろ⁉」
「私があなたを愛している限り、殺すなんてしないわっ‼」
「だが俺がお前を殺す。俺を傍に置いておくとなると、常に命の危険に晒されることになるぞ?」
「それでもいいわ」
彼の言葉に、アリスフィリアは嬉しそうに微笑んだ。
「あなたは己の信条に従い、私の命を狙い続ければいい。不意をつければ、もしかすると私を殺すことができるかもしれない。悪くない条件だと思わない?」
「……何が狙いだ。何を考えている⁉」
「何も。私は、ただ愛するあなたが傍にいてくれさえすればいいの。私の本気を示すためにあなたの望むことは、何でも叶えてあげる。って言っても、自分で自分を殺せって言うのはなしだけどね」
「……それなら、今すぐ人間への侵略をやめろ。汚染した大地を蘇らせろ」
「お安い御用よ」
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