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私の家探し(7)
【言霊はある?②
/困った(?)お嫁さん】
ある時、
レミさんの実家で法事があって、
弟さん、ナツエさん、ミノリさんが、
レミさんの東京の家に行きました。
ミノリさん曰く、
何かの拍子に、
レミさんのお母さんと妹さんが話しているのが、
聴こえてしまったらしく、
妹さんがお母さんに、
「レミを貰ってくれる奇特な人が居て、
ホント、良かったよね。
まさかレミが結婚できると思わなかった。
あちらの家の人達、
どうやって辛抱してるのかしらね。
何かあっても、
絶対にこっちへ帰ってきてほしくないわ」
と言い、母親なる人も、
同調するような返事だったというのです。
「どういう意味?」
「分からん」
「ミノリさんはどう思うの、レミさんを」
「一緒に歩いてても、
お義姉さん、
今はそちらへ行かない方が良いです、
回り道しましょうとか、
さっき通りすがった人、
この後、良くないことがありますよとか、
そういうことを言うのね」
「そりゃ困ったね。
で、どうしてるの」
「逆らわないようにしてる。
やっぱり弟と甥が可愛いから、
波風立てないようにしようねって、
ナツエと決めてるのよ」
「余計に助長しちゃうんじゃない?
弟さんは夫婦仲、良いの?」
「色々我慢してるみたい。
弟はとにかく子供が大事だから、
夫婦が言い合いするような、
そんな真似はしないようにしてるらしい」
「何を我慢してるの、弟さん」
「レミちゃん、
どうも近所の人達から悪口言われたり、
挨拶しても返事してもらえなかったり、
意地悪されてるらしいのよ。
その話が延々と続くらしい。
弟は諸事情で会社を設立することになって、
忙しいんだけど相手して、
家事も手伝って」
「レミさん、こちらに来て長いでしょ、
名古屋で友達できたのかな」
「それがねえ、
私とナツエの前でレミちゃん、
バシッと言ったもんね、
私は名古屋が嫌なんです、
だからこちらで、
友達や知り合いを作るつもりはありません、って」
「凄いね。
まあ、ミノリさんは京都生まれで、
中学の途中まで京都だから、
名古屋人じゃないかもだけど、
ナツエさんは言わば、
名古屋生まれ、名古屋育ちだもんね。
姑の前で言い切るの、凄いね」
「ビシッと言ってた」
「そもそも近所の人達も、
当人の耳に入るような悪口の言い方、
どうやってするのかな」
「不思議だよね」
「かといって弟さんが出ていくと、
余計に話がややこしくなりそうだしね、
近所付き合いは」
「やっぱり、
東京のお母さんと妹さんの会話が気になるわ。
どういう意味かなって」
「東京の妹さんはどういう人なの」
「それがまた変わってて。
レミちゃんが言うにはレミちゃんより、
霊感っていうのかな、
そういう力が強いんだって。
道でいきなり赤の他人が、
拝ませてくださいって土下座したり、
教祖になってくれませんかって、
ちょっと知り合っただけの人に、
頼まれたりするんだって」
ここまで来ると眉唾です。
けれど、
レミさんがそれをミノリさんに話したという、
それだけは事実です。
「レミちゃんはレミちゃんで、
何かの都合で銀行へ一緒に出掛けて、
並んでたATMの横が無人になったから、
そのATMを使おうとしたら、
お義姉さん、
そっちのATMはやめてください、って、
強く言われちゃって」
「何でダメなの、そのATM」
「知らん。刺激したくないから、
黙って従っておいた」
「困ったね」……
それからどのぐらい経ったでしょうか、
一年か、二年か。
お祖父さんが贈与してくれた戸建てを、
弟さんは売却し、家族三人、
他地域の賃貸マンションに引っ越しました。
それが、やはり、
近所トラブルが原因なのです。
……続く。
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