私の家探し(8)

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私の家探し(8)

 【言霊(ことだま)はある?④ /言霊はあった!】  今まで書いてきたような事情によって、 私は何度も引っ越しをしました。  すると、引っ越し作業自体は面倒でも、 色々な街に住む楽しみに目覚め、 その頃、俳優の西岡徳馬さんが、  「家族には迷惑をかけていますが、 僕は引っ越しが好きで、 二年毎ぐらいに住まいを変えてるんですよ」  と雑誌で話しているのを読んで、  そうそう、それよ、 そうなのよ、うん!……  と、内心激しく同意したものでした。  とはいえ、気の赴くままに、 あちこち住むのは無理です。  また、賃貸に住み続けるには、 家賃、管理費、保証人等、 不安の種があって、 何とか条件に合った家を買えないか、 毎日必ず、 不動産サイトをチェックしていました。  希望は、価格に加え、  ・名古屋市及び名古屋圏    ・リフォーム代や将来の修繕費を考えて、 隠居生活向きサイズ(できれば平屋)  という二点。  縁あって(いずれ、書きたいと思います) 今の家を購入することになり、 無事、引っ越し完了!  とはいえ、 そこに至るまでの数年間、  いつまで家賃払えるかなあ、 リタイアまでに家が見付からなかったら、 家賃で貯金が減るばかり、 困ったなあ……  と、これがいつも頭の隅にありました。  高給取りなら、西岡さんのように、 まあ、二年とは言わないまでも、 ちょこちょこ、 色んなところに住んでみたかったけど、 庶民はそうはいきません。  さて、その悩ましくしていた時期、 冗談で私はミノリさんや涼子さんに、 よく言っていたのです。  「豊臣秀吉の生地の中村区生まれで、 結婚して、 徳川家康の生地の岡崎市に住んだから、 あとは織田信長でコンプリートだわ」  と。  愛知では信長、秀吉、家康が、 三英傑と呼ばれ、 郷土の誇りとされているのです。 (信長が居たから、 他の二人が続いたとも言える)  とはいえ、現在、 信長が、 ほぼ主人公の物語を書いている私が、 この時は、 信長公の生地が何処なのか、 実は知りませんでした。  清須かな?岐阜かな? 名古屋城かな?……  という程度の認識。  引っ越した後、 ちらっと思ったものです。  三英傑の故郷のコンプリート、 出来なかったなあ……  中川区が前田利家の生地で、 数年間住んだけど、 前田利家だと三英傑ではないからなあ……  さて、今の家に落ち着いて、 約一年後。  郵便受けにチラシが入っていました。  市内の文化会館での催しのお知らせ。  『信長公生誕を祝う会』  なぬっ!?  チラシは信長公の生誕地である、 国府宮(こうのみや)神社を擁するこの街の有志によって、 信長公の生誕日を祝い、 公の生涯についての講演はじめ、 文化祭的な催しが開かれるという案内でした。  三英傑生誕地、コンプリート!  ですよね!?  中学二年から高校卒業までは、 信長公の子を三人産んだ女性の生地にも、 暮らしていたので、 ますますコンプリート感が強まりました。  二十年程前に古文書が発見されるまで、 信長の生地は那古野城だとされていたのが、 信憑性のある史料が見付かったことで、 勝幡(しょばた)城に変更されたのだとか。  勝幡駅は我が家から車で五分の距離ながら、 他の市なのですが、 勝幡城跡は我が街にあるという奇遇。  蛇足:  勝幡という地名は、 もともと一帯が「塩畑」という名であったのを、 信長公のパパ、信秀さんが、  「塩の畑では縁起が悪い」  と言い、勝利の旗という意味で、 勝幡としたそうで、 駅前ロータリーには、 信秀パパ、土田御前(信長のママ)、 赤ん坊の信長という、 ほのぼの御一家の銅像が建っています。  各地に信長の銅像数多あれど、 信長が赤ん坊の像って、 ここしか無いと思うの。  貴重ですよね……。 オムツあててる吉法師(信長)……。  心の声:  誰が赤ん坊の信長を見たいんじゃい!  岐阜駅前の、 金ピカ信長像に負けんド派手な信長像、 建てんかい!  ベビー信長、容積面積、小さいぞ!  ……。  お隣の老婦人に、  「ここ、信長の生まれ故郷だったんですね」  と言うと、またも面白い返事が。  「っていうか、この地域は、 七、八年前に合併で街が一緒になったけど、 それまでは違う市町村だったから、 織田信長の故郷になって、 まだ歴史が浅いのよ」  (笑)  我が家は、 私が引っ越してくる数年前に、 信長公の生誕地として、 新たに組み入れられた地域なのでした。  でも、コンプリート達成!  その後、ふっと思いました。  人生の半ばになって無一物になって、 いつか家賃さえ、 払えなくなるんじゃないかと不安を抱えて、 冗談で悔し紛れに言っていた、 三英傑の生地全部に住むなんて話、 求めたわけではないけれど、 家を見付けて、買って、 住んでみたらそうだった、 しかも、 市町村合併で生地になっていたという……。  おかしなものです。 縁なのか、引き寄せなのか、 または、言霊(ことだま)?  宗教も信仰も、 縁遠い私ではありますが、 言霊って無いわけではないのかもしれないなあと、 今は思っています。  なるべく楽しく、明るく、 何でも考えると良いってことかな?  それがなかなか難しいんですけどね。            
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