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おやすみ
ぶくぶくぶく、泡が立つ。
浮き上がった空気は膨れ、パチンと音を立てるように弾けて消えた。
ボクは両手で抑え込み、深く深くそれを沈める。
細かな泡が浮き上がる。
上がってしまうものを両手で押してまた沈める。
ボクは肘まで水に浸り、まくり上げたシャツぎりぎりまで濡れている。
何度も何度も繰り返す。
力を込めて、水底へ。
上がってきてはいけないよ。
目も鼻も口も耳も、水の中へ押して、押して、押して……
すっかり全身浸らせて、頭から足先まで撫でていく。
水は濁り、この手だけでそれを見た。
ぐったりとした体は重く、ぽたぽたと水が床に垂れる。
慌てて投げ込み、スイッチを入れた。
10分程度で脱水は終わり、湿った体を引き上げる。
その毛を整え、お日様のもとへ。
ぽかぽか陽気の風が吹く。白いレースのカーテンが揺れた。
よいしょよいしょと洗ったものだから疲れてしまった。
ボクのクマが乾くのは夕方になるだろう。
だから少しだけ、おやすみ。
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