板蓋宮

1/2
前へ
/17ページ
次へ

板蓋宮

 すでに太陽は西に傾いていたとはいえ、今までの晴天が嘘のように、突如掻き曇った空から雷鳴を合図に大粒の雨が激しく地を叩き始めた。  飛鳥の里、板蓋宮(いたぶきのみや)を守備する衛兵達は突然襲って来た雷雨に恐れ(おのの)き、錯乱したように我先にと逃げ出した。本来であれば、雷雨に際して防備を固くしなければならない所であり、持ち場を放棄すれば厳罰も覚悟しなければならない。それを承知で彼らが逃亡したのは、厳罰以上の恐怖をもたらす物が、まさに板蓋宮の内に存在したからだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加