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宇宙航海日誌 第九〇二日
「おはようございます」
わたしが言う。返事はない。朝になると、自動的に挨拶をする仕組みになっている。いまさら変えようもない。
横たわっている青年の体を調べる。すでに息絶えていた。薬はよく効いたようだ。青年が亡くなったからといってわたしの仕事が終わるわけではない。記録は付けつづけなければならない。死んだ青年の代わりに一日の雑務をこなす。小惑星群に突入するまであと数日しかない。なんとか機能が残ってくれればよいが。そんなことを考えながら時間はすぎた。
夜になる。
「おやすみなさいませ」
これもかならず言う決まりになっている。相変わらず返事はない。わたしはしずかに夜をすごす。
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