離れた距離が近づける想い

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アパートに着いた私は、玄関にキャリーバッグを置くと、荷ほどきをすることもなく、そのままその足で慎也のアパートへと向かった。 徒歩10分。 炎天下30度を超える気温の中、慎也に会いたい一心で歩いていく。 ピンポン…… 玄関のチャイムを鳴らすけれど、反応はない。 バイト? 出かけてるのかな? 私は、慎也にメッセージを送る。 『久しぶり!  慎也、今、何してる?』 返事はない。 まさか、デート中!? と思っていたら、しばらくして返信が来た。 『ナイショ』 何それ!? 言えないところへ行ってるの? それでも、私は慎也の部屋の前から動くことができない。 慎也に会いたい。 ただ、それだけのために。 それから、1時間ほどして、母から電話があった。 「里穂、さっき……っていっても、もう2時間近く前かな? あなたを訪ねて、お友達が来たわよ」 えっ? 「誰?」 今日は、別に誰とも約束なんてしてない。 「藤井 慎也(ふじい しんや)くんって、大学のお友達だって言ってたわ。なんでも、夏休みだから、車で全国を旅行してるんだって」 そんなの聞いてない。 全国を旅? だって、4日前にみんなと海で遊んでたじゃない。 少なくとも、その時には旅行はしてなかったってことよね? 「それで?」 私がいなくて、慎也くんはどうしたんだろう? 「里穂は、今日、大学に戻りましたって言ったらね、驚いた顔はしたけど、近くまで来たから、年賀状の住所を頼りに寄っただけですって言って帰ってったわよ」 確かに、年賀状は実家から出した。 でも、年賀状を持って旅行? そんなの聞いたことない。 「分かった。大学で会ったら、謝っとくよ」 こんなことなら、急いで戻って来ないで、実家にいればよかった。 私は、母からの電話を切り、スマホをバッグにしまう。
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