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飛鳥さんの声音は、毒だ。色を孕んだ低音が耳に入れば胸の奥底に響き、たちまち全身を甘い毒がまわって神経を麻痺させる。
「……見せません」
「いい子」
緊張でからからになった喉から搾りでた声は、あっという間に艶やかな低音に飲み込まれていく。すぐに顔が赤くなるのが分かり顔を背けてみたが、飛鳥さんにはすぐにばれてしまう。
「恥ずかしがってる美羽はかわいい」
「……かっ、かわいくないです」
毒がまわった私は、蚊が鳴くように否定の言葉を放つことしかできない。なのに、私を見下ろしている男は余裕たっぷりにからかっている。
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