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しばらく夜桜を見ていたが、肌寒くなった私がひとつ身震いする。それを見逃さなかった飛鳥さんが、「帰るか」と歩き出した。
私の歩幅に合わせて、飛鳥さんは歩いてくれている。さっきはくっついていたのに、私達の間には微妙な距離が生まれていた。
「あのっ、お付き合いいただいて、ありがとうございました」
「どういたしまして」
飛鳥さんは、私の恋愛力を高めるための練習相手であって、恋人ではない。
飛鳥さんの一連の行動は、全て演技。驚きを通り越して感動さえ覚える。有名な映画祭で主演男優賞を受賞してもおかしくないほどだ。
練習が終われば、飛鳥さんは私の体を触れることはない。微妙に空いた距離が埋まるのは、また一週間後のことになる。
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