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倉持桜子は、中学からの親友だ。
中学の頃から派手でやんちゃで男勝り、一般に言うヤンキーの部類に配属される桜子と、勉強だけが取り柄の真面目で地味な私が一緒にいると、パシリに使われているのではないかと先生から心配されることもあった。
桜子といると気を張らずにいられて落ち着くので不思議だ。仲良くなったきっかけは、確か入学式でたまたま初めて話した、という些細なものだった気がする。
何を話したかは忘れたが、一度言葉をかわせば友達、という義理堅い桜子は、私に変な虫がつかないよう見張っている第二の保護者だと自負していた。
「とりあえず上がって。お茶持っていくから」
桜子の言う通り、歩を進めるたびに軋む急な階段を注意して上り二階の部屋へ入った。表で感じる老舗が醸し出す荘厳な雰囲気は、桜子の部屋に一歩でも入れば一気に崩れ去る。
壁一面に、桜子の彼氏が所属しているヘビーメタルバンドのポスターが貼られ、壁に設置された棚には、シルバーのドクロ型のメガネ置きや黒地に赤文字で『GO AHEAD』と書かれたバンドタオル、スキンヘッドの彼氏とのツーショット写真などが飾られている。
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