基礎演習

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 信号が青になり、ふたりは話を続けながら歩いていく。 「もうひとりはあれっすか? セフレっすか?」 「セフレにもなんねぇよ。あいつ、挿入()れようとしたらすっげぇ拒むし、ヤってる間ずっと泣きっぱなしだしでもう萎えちまって」 「もしかして、処女(バージン)っすか?」 「二十歳超えて処女とか重いだろ? だから早めに済ませた方がいいって半年言い続けて、昨日ようやくだ。ったく心が折れそうになった」 「先輩、よく説得しましたね。俺だったらヤらない女とはとっとと別れますけど」 「何度か別れようと思ったけど、どうせならヤってからにしようと思って。掃除とか料理とかはうまかったからそれなりに続いただけだし。あとは顔、だな」 「家政婦みたいじゃないですか」 「だな、ただの家政婦」  彼らはまだ気づいていない。ケラケラと楽しげに嘲笑う後ろで、家政婦(わたし)が全てを聞き遂げてしまっていることを。
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