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画面越しで見るよりも顔は小さく、華奢でありながら豊満な胸元は同性でも色気を感じてつい見惚れてしまう。
茶色にカラーリングされた長髪は、彼女が動くたびに揺れていい匂いが漂ってくる、ような気がする。
「やっぱり美人だよね」
友人も見惚れてしまっているようだ。周りにいる野次馬も、結亜さんの魅力にどっぷり浸かっている。
その中、私はカメラマンの男性に釘付けになっていた。
ひとつとして同じポーズをすることのない結亜さんの、一瞬の笑顔を撮りこぼさぬようにシャッターをきり続けている。
その間、結亜さんと楽しげに会話をしながら、時には称えるような言葉を口ずさんでいた。
それでも、ファインダーを覗く眼差しは真剣だった。目が離せず、まばたきすら忘れてしまう。
阿吽の呼吸とはこのことだ。会話を弾ませながらも次々と切られるシャッターの合間に、カメラマンが次はこの角度から、このポーズで、この表情で、と短く指示を出す。
結亜さんはそれに応えるどころか、それ以上の表現をして堂々とカメラのレンズを見つめていた。
プロの仕事を目の当たりにして、ばくばくと胸が高鳴り続けている。
撮影が一区切りすると、結亜さんは立ち上がってカメラマンの横へと擦り寄っていった。
途端、カメラマンは先ほどまで見せていた真剣な瞳をくしゃりと歪め、柔和な笑みへと表情を一変させる。
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