3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう」
制服のネクタイを結びながら、リビングに入る。
父さんと母さんがいて、朝食を用意してくれていた。
「おはよう、いつき」
「・・・母さん、無理して起きなくてもいいのに」
「無理なんてしてないわよ。早く食べちゃって」
そう言うと、母さんは食べやすくカットした林檎の皿を仏壇に供える。
父さんは黙って新聞を見ていた。
「おはよう、しおり」
母さんはそう言って、手を合わせる。
目を瞑り、しばらく黙っていた。
僕はプレートに乗った朝食を見る。
食パンが少し焦げている、と思いながら隣のオムレツを一口食べる。味がしなかった。
ちらっと母さんを見るが、仏壇の写真に向かって笑顔で話している。
僕はオムレツを一気にかき込み、水で流し込んだ。
写真の中には、控えめに笑うしおりがいる。
僕と父さんと母さんは、妹のしおりが死んでからおかしくなった。
最初のコメントを投稿しよう!