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「おはよー」
「おはよー!昨日のドラマ見た?」
学校の靴箱では、皆それぞれ話して笑っている。
家族が死んでも学校も世界も、変わらず回っている事をつくづく思い知る。
「おはよー、黒沢」
「おはよ」
靴箱でクラスメイト達と挨拶する。その中の1人、僕の親友・青山ひろむが近付いて耳打ちする
「大丈夫?」
「何が?」
「いやー、ほら・・・白石の事」
恐る恐る聞いてくる。僕はとぼけたふりをした。
「白石がどうしたの?」
「いや、だからさ・・・先週アイツの兄貴の葬式だったじゃん。大丈夫かなーって思って・・・」
ひろむは歯切れ悪く言う。照れているようにも見える。
「あー・・・まぁ大丈夫。って言ったら嘘になるけど」
「だよな・・・大丈夫かな・・・」
「あぁ、僕への心配じゃないんだ?」
「え?・・・あ、いやっ、そうじゃなくて!」
自分の言った事に気付き、ひろむは慌てふためく。
僕はクスクス笑いながら歩き出す。
「本当に良い奴だな」
「オイいつき!違うからな!」
教室に入ると、クラスの女子達が僕を見る。
その中央には、白石ななせがいた。
「黒沢くん、ちょっと」
ななせに寄り添っていた取り巻きの女子数名が僕の元へ来た。
「ななせ、まだ元気無いの」
「そりゃそうだよ。お兄さんが亡くなったんだもん」
「凄く辛いはずだよ」
女子達が小声で口々にまくし立てる。
僕はちらっとななせを見ると、俯いたままだった。
「黒沢くん、ななせの側にいてあげて」
「励ましてあげてよ」
「黒沢くん、ななせの彼氏なんだから」
可哀相キャンペーンの如く、女子達が僕に意見を押し付けてきた。
僕も妹を亡くしてるんだけど。
なんて言って、キャンペーンの肥やしにされるのは嫌だったので黙っていた。
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