驟雨と祈りの狭間にて

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 「・・・ちゃんと食べてる?」  「・・・え?」  昼休み。屋上の隅で僕は、ななせと弁当を食べている。  「なんか、少し痩せた気がするから」  「・・・そう、かな」  実際に今も、ななせの弁当は全然減ってない。  「・・・あんまり食欲無くて」  そう言って辛そうに笑うななせを見て、1年前の自分を重ねる。  だからか、『元気出せ』とも『食べなきゃ駄目だぞ』とも言わない。僕も痛いほど分かるから。  「無理に食べなくても良いと思う。でも心配なのは本当だから」  そう言って僕は自分の弁当の唐揚げを食べる。これはちょっと味が濃かった。  ななせは僕を見て少し笑った。前ほどでは無いが、太陽のような笑顔の面影がある。  僕も微笑む。  上手く笑えてるか分からない。  でも僕の中で、どんどん何かが潰れていくのは分かった。
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