チクタクチクタク

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 眠れないと些細な音が気になる。  チクタクチクタク時計の音。  チクタクチクタク眠れない。  普段は気にならないその音が、こんな時ばかりやけに気にかかる。  チクタクチクタク響く音。  チクタクチクタクうるさいうるさい。  チクタクチクタク。  チクタクチクタク。  あー、もうっ。  我慢ならないと起きあがり、ベッドサイドの目覚ましに手をのばす。明日起きられなくても知ったことか。今、眠れないのが何よりも問題だ。  電池をとりだし、再びベッドに潜り込む。これでもう大丈夫。  秒針は止まった。  音は止んだ。  静かに眠ることが出きる。そのはずだったのに。  チクタクチクタク時計の音。  チクタクチクタク眠れない。  目覚ましは動いていない。音はしないそのはずなのに。どうして音が響くのか。  視界に入ったのは、壁にかけた時計。風景の一部と化していたその時計が、こんな時ばかり存在を主張するだなんて。  壁からはずし、電池を取り出す。秒針が止まる。音は止む。  これで静かに眠れる。そのはずだったのに。  ベッドに潜る。そうして、  チクタクチクタク響く音。  チクタクチクタク眠れない。  どうしてどうして。  目に見える範囲にもう時計なんてないのに、どうして音が響く。  棚や引きだし。クローゼット。探しまわりようやく見つけたのは引きだしの奥の腕時計。  とっくに存在を忘れていたそれが、今になってこんなに音を響かせるなんて。  電池は取り出せない。厳重に布でくるんで、奥の奥へと追いやる。  さすがにこれで、もう音は聞こえないだろう。静かに眠れる。そのはずなのに。  チクタクチクタク時計の音。  チクタクチクタクうるさいうるさい。  もう時を刻むものなんてない。そのはずなのに。どうしてまだ音が響き渡る。  重い至るのは携帯で。確かに時を刻む機能はあるけれど、デジタルなのに。それでもダメなのか。音は響くのか。  電源を落とし、ベッドに深く潜り込む。  もうこれで静かになってくれ。眠らせてくれ。  それなのに。  チクタクチクタク時計の音。  チクタクチクタク止まらない。  電池を抜くだけではダメなのか。奥へと押しやってもムダなのか。電源を落としてさえ、意味がないのか。  チクタクチクタクうるさいうるさい。  チクタクチクタク眠れない。  ガシャンッ。ガシャ、ガシャ。  はぁ、はぁ、はぁ。  叩き壊して、潰して、バラバラにして。原型をとどめなければもう音の出しようはない。時は刻めない。  これで、ようやく、静かに…… チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクワタベタイチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク    う    わ    あ    あ    あ    |    |    |    |    |  チュンッ、チュン  カーテンからわずかにさしこむ朝日。  ベッドに横たわる一人の人物。その身体も、 シーツも赤く濡れている。  コレデヨウヤク眠レルネ。  二度ト目覚メルコトハナイケレド。    チクタクチクタク 
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