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「いただきます。…ところで、今日も見たの?その変な夢」
「また、どんなだったかは忘れちゃったけどね…。起きると、すっと消えちゃうの」
話しつつ、サハナも着席。
手を合わせ、トーストに目玉焼きを乗せ、大きな口でパクリ。
うん、絶妙な半熟具合。
我ながら美味しく出来た。
「お母さん帰ってきたら、ちゃんと相談しな」
「うん、そのつもり」
「ところで時間は大丈夫?今日、朝礼でしょ?」
「あ、やば、もうこんな時間!」
時計を確認して吃驚した。
あと十五分で、家を出ないと遅刻だ。
「やばい!遅れる!」
大急ぎで朝食を胃に収め、食器洗いは父に投げ、学校の鞄とお弁当を手に再び洗面所へと駆け込む。
素早く髪を梳かし、いつの頃から使っていたかなんて忘れてしまったくらい、とても大切にしているリボンで一つ結びにセットした。
鏡の前で、身形と笑顔の最終確認。
よし、今日も頑張ろう!
艶やかな長い髪を靡かせて、玄関に走った。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
父の見送りの声を後に、家を飛び出す。
今日も、いつも通りの全力疾走。
春なら真白い花が咲き誇る深緑の並木道を鞄を抱えて走り抜ける。
近所の小母さんに声援を送られながら、急な坂道を駆け上がった。
坂の頂上で乱れた息を整えて、すっくと上げた視線の先―――…、街を一望する高台から見上げる群青の晴れ空には見事なまでの入道雲が闊歩していた。
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