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第七話 邂逅する者、惜別する者(4)
穏やかな凪の海だった。
穏やかな帰路の筈だった。
しかし、迎えに来た定期船を見て、唖然とした。
定期船にはラピア国から派遣された護衛の騎士達が乗っており、サハナ達は物々しい彼らに出迎えられることとなった。
「随分と仰々しいですね」
思わぬ出迎えに流石のミヤコも面を食らっていた。
騎士達の胸にある徽章は、首都の治安維持や王の護衛を仰せつかる騎士の中でも選りすぐりの精鋭部隊の物だった。
「国王陛下からの勅令です。我々がセラスタまでお送り致しますので、どうぞご安心下さい」
隊長格の騎士は穏和に告げたが、その存在自体が穏和ではなかった。
不穏な騒ぎが続いたとは言え、これでは悪目立ちする。
(ラピア国側のパフィーマンスだな…)
冷静な目で、そう考えたのは見送りに来たマーリンだった。
本来ならば、この場にはルコウがいる筈だったが大事を取って弟子は城に留まらせた。
予想はしていたが、帰路に就く未来の巫女を一目でも拝もうと朝から野次馬が集まっていた。
そこに報道関係者も交ざり始めて、辺りはもうお祭り騒ぎ―――…。
ルコウも年齢と見た目からパパラッチの餌にされ兼ねず、全快ではない今、連れ出すのは酷だった。
「…これだったら特別便を出してもらうべきだったわ…」
やっとのことで乗り込んだ定期船の特別室で、ミヤコは頭を抱えた。
目立たない一般客室を頼んでいたが、この騒ぎに乗り合わせたマナーのなっていない乗客が、サハナのみならずマサトやファイダンにまでサインや握手をせがんで来た為、苦肉の策で国賓などが利用する客室を開けさせる羽目となった。
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