第七話 邂逅する者、惜別する者(4)

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「申し訳ありません。費用はこちらで負担致します」  騎士隊長は謝っていたが、口先だけなのが作り笑いでバレバレだった。  世間へのパフォーマンスにしても、やることが下手である。 「当然です。警護の徹底をお願いします」  苛立ちを露わにミヤコは言い捨て、名残惜しそうに外を眺める娘の元に歩み寄った。  出来るなら城でもう少しだけゆっくりさせてやりたかったが、誰が密告したのか予定していた定期便の時刻が報道陣にリークされてしまった。  ゼルジルド出現の報道もあり、混乱が予想されたため仕方なく予定時刻を大幅に前倒す他なかった。  本来であれば、最後にしっかりと気を取り直して行ないたかった送別も時間が無くて、簡略的に済ます他無く、お世話になった城の人々とも挨拶もままならなかった。  そうこうして前倒しで無理をして港までは来たが、待ち構えていた輩が既にいた。  警備が声を上げても、それらは減る様子は無く、見る見る他を呼び寄せ、加えてラピア国の騎士が目印になった。  もうプライバシーもあったものではなかった。  サハナのお披露目会であった初日の宴では報道規制を徹底したが、この様子では故郷セラスタに戻る頃には、噂は広まっていることだろう。  暫くは報道陣の恰好の餌食になりそうである。
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