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「取り敢えず、こちらのオーナーに確認を取りますからお待ち頂けますか?」
溜息交じりに告げ、ミヤコはフロントに向かった。
時を同じくして、疲れ切った様子でオーナーがバックヤードから姿を見せる。
結果は言うまでもなかった。
「申し訳ありません。同業者を当たってみたのですが…」
「貴方方の非ではありません。我々が嵌められたようですから…」
ミヤコの言葉にオーナーは堪らず悲痛な顔をした。
それを見て、彼女は確信した。
「…嫌がらせですね?あの騎士隊長にも脅されたのでは?」
そう耳打ちするとオーナーは項垂れてしまった。
全く正直な人である。
「どうか気に病まれないでください。私達も警戒が甘かったですから」
そうは言いつつも、内心ミヤコは行き詰まっていた。
このまま富豪の家に世話になるのは、策に嵌ったようなものだ。
頼りのベールクオン城も騎士隊長が何やら手引きしているようで、実際は空いているのだろうが当てには出来ない。
―――さてさて、どうするか。
考えあぐねていた時だった。
不意にロビーが静まり返り、何事かと振り返った。
「やはり、こちらにおられましたか」
その声は目が合うと同時だった。
上等な誂えの帽子を取り、頭を下げた姿にミヤコは呆気に取られた。
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