序幕 世界樹の愛し子

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 母の腕の中、もぞもぞと手足が動き出し、長い睫毛を携えた瞼がぱちりと開いた。  見知らぬ大人に囲われていることに気が付いて、戸惑ったように少女は母の胸にしがみ付いた。 「………、…お姉さんたち、だぁれ?おかあさん、ここどこ…?」  不安そうに、少女は母の顔を見上げた。  怯える娘の不安を拭う為、母は疲れを笑顔の下に隠した。 「世界で一番、きれいなお花が咲く場所。お姉さんたちは、そのお花をお世話しているの。ほら、ご挨拶しようね」  ちょこんと母の前に立たされ、半ば強制的に三人と向き合う。  良く分からないまま、娘は優しく微笑みを浮かべる大人達に一生懸命お辞儀をした。 「こんにちは、はじめまして!」 「ふふ、はじめまして。私はシエナ。あなたのお名前は?」  少し屈んでシエナは名乗りながら視線を合わせた。  少女はやや緊張した様子で、背筋をピシッと伸ばした。 「サハナ・リースマンですっ!ごさいです!」  挨拶は大きな声ではっきりと、とでも習っているのだろう。  何とも台詞的なぎこちない自己紹介に、大人達からは笑顔が零れた。 「はじめまして、サハナちゃん。マーリンと言います」 「サハナちゃん、はじめまして!あたしはヴァネッサ。よろしくね!」  その場に膝を突き、視線を合わせながら二人も挨拶。  気さくな大人達の対応に、不安げだった表情は愛らしい笑顔に変わった。  どうやら本来は、人懐っこい性格らしい。
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