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なんこれ?
男の人を抱えながら固まっていると、その綿毛は男の人の傷にすっと吸い込まれていく。
するとみるみるうちに傷が塞がっていった。
これは、この精霊達の力?
だとしたらどうして私が来るまでにしてやらなかった?
私に魔力は無いんだよね?
だったら私の力じゃない。
不思議に思っていると男の人が小さく声を出した。
ハッとして男の人を木に寄りかからせる。
「大丈夫ですか!?」
そう声をかけると男の人が目を開けた。
「誰……?」
傷が塞がって顔が良く見える。
わお、めっちゃイケメン。
男の人はジッと私を見つめてから自分の体を触って目を見開いた。
「なんで……」
「あー、えっと。なんか綿毛が貴方の体に入っていった瞬間傷が塞がりまして」
「は?」
「いや、わけわかんないですよね!?私だって分かりません!!恐らくはこの子達のおかげだと思うのですが……」
そう言って男の人の後ろを指さすと男の人が驚いた。
「これ……オベロンとティターニア…?なんで俺に……」
驚いた後もう一度私を見てから何かを考え始めた。
「『その者、猫を連れてやって来る、国の救世主である』……」
「あの?」
「まさか、預言者が言っていた救世主か?だとしたら、女神?」
「あ、違いますよ!私は女神じゃありません!」
「え?」
「私、この世界に間違って召喚されたみたいなんです。帰る方法が無いからこっちで生活してくれってチェイスさんに言われて。そもそも私、魔力ないみたいなんですよ」
「魔力が無い?」
男の人はまた何かを考え始めた。
笑ったりしない人だな……。
クールって感じで、綺麗な顔もあってモテそう。
騎士団の人って皆こんなに綺麗な人達ばっかなのかな?
「さっき、綿毛がどうのって言ってたよな」
「はい」
「それはオベロンとティターニアの力じゃない」
「はい?」
「こいつらは精霊で、おそらくは俺に力を貸してくれている妖精だ。俺も初めて見たけど。なんで俺にもアンタにも見えてるのかは分からないけど、こいつらは『治癒』なんて出来ない。それに俺の魔法も『治癒』じゃない」
「治癒?」
「俺は『光』の魔法を使うが治癒は出来ない。そもそも治癒魔法は希少なもので、この国で扱える存在は今の所居ない。いたとしても、短命ですぐに死んでいく」
「え!?」
「ただ、一つだけ例外がある。『異世界から来た治癒魔法使い』であれば、すぐに死ぬことがない」
「異世界……」
「アンタ、魔力が無いって言ったよな。治癒魔法は大気中のマナと呼ばれる魔法物資を扱うことによって生み出される。だから、アンタの中に魔力が無くても当然なんだ。俺達のように体内にマナを宿しているわけじゃないから」
難しくてついていけないけど、つまりは私は治癒魔法とか使える人間って事?
それも、周りのマナ?とかいうの使って?
「俺の傷を治したのは間違いなくアンタだ」
「私!?」
でもどうやって治したかとか、どうやって魔法発動したかなんて分からない。
『助けないと』って気持ちだけで動こうとしただけで……。
固まっていると男の人は息をついた。
「正直、もう死ぬつもりでいた。今まで出会った中で一番凶暴な魔獣だったし、俺の命一つだけで国を守れるならって。……でも、冷たくなっていっていたはずの体が急に温かくなって。目を開けたら目の前にアンタがいた」
「にゃん太郎が……見つけたから……」
「アンタが女神じゃなかろうと、救世主だろうと、治癒魔法使いだろうと、なんでもいい。ありがとう、俺を助けてくれて。それから、好きだ」
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