突然の異世界生活

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にゃん太郎に話しかけていると女の子が戻って来た。 「当店おすすめのパイセットです。猫ちゃんにはコレね」 目の前に置かれた美味しそうなパイとコーヒー。 にゃん太郎には謎の魚料理。 私は意を決して食べてみた。 ……やっぱり美味しくない。 この世界は私の元の世界とは味付けも、素材の味も何もかも違うようだ。 私は女の子を見上げた。 「あの……」 「どうかした?」 「少し……厨房をお借りしてもいいですか?」 「え?」 不思議そうな女の子。 やっぱり断られるかな。 いきなり来た新顔にこんな事言われても迷惑だよね。 ていうか普通に気持ち悪いと思う。 そう思っていると女の子はニコッと笑った。 「いいよ」 「え?いいんですか?」 「うん。コレ、美味しくなかった?」 「あー……えっと……。私、つい最近ここへ来たもので……。ふるさとの味が恋しくて」 「そうなんだ。あ、じゃあさ、厨房貸してあげる代わりにふるさとで食べてたもの、教えてよ」 人懐っこい笑顔でそう言われて私は頷いた。 凄くいい人だな。 感動しながら厨房へ向かう。 食材はどれも見た事のないようなものばかりだ。 とりあえず匂いをかいでみる。 この木の枝みたいなやつ、バニラっぽい匂いする。 多分コレは小麦粉だと思う。 この謎の果実……。 手に取って切ってみる。 そして一切れ食べてみる。 うん、中身の見た目も味もリンゴに近い。 その他にも、見た目は違うけど匂いや味が似ているものがたくさんあった。 もしかしてこの世界の料理って、組み合わせがめちゃくちゃなのかもしれない。 でもそれが普通で育ったから、特に何とも思わないんだろう。 私はテキパキと作業を開始し、アップルパイを作り上げた。 にゃん太郎には食べれそうな魚を焼いて与える。 にゃん太郎は美味しそうに食べていた。 「え、めちゃくちゃいい匂い!あの実、食べれるんだ」 「え?食べないんですか?」 「煮込むだけのものだよ?」 あれを、煮込む……? どんな発想でそうなるの? 出来上がったアップルパイを食べる。 美味しいー!! お菓子作りは得意だ。 母がお菓子作りが大好きで、よく一緒に作ったりしていたから。 ……お母さん、心配してるかな。 そんな事を考えていると女の子が不思議そうに私を見ていた。 .
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