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ちょっと待て。
今とんでもない言葉が聞こえたように思えるのは私だけだろうか?
「え?」
首を傾げると男の人は顔色を変えずにもう一度同じ言葉を口にした。
「アンタが好きだ」
「いや、ちょっと待ってください!何がどうなってそうなりますか!?」
「死にかけだった俺を見捨てずに助けてくれた。それに、アンタの顔も声も俺の好みだから。目を開けたら好みの女が俺を助けてくれたって、そんなの好きにならない方が不思議じゃない?」
「不思議ですよ!!そもそも私も貴方もお互いの事何も知りませんよね!?その気持ちを確定するのは少々早いのでは!?」
「俺は魔法騎士団第一部隊隊長のシオン」
「あ、私は玲と申します。この子はにゃん太郎で……って違います!!」
「レイ、可愛いな」
「かわっ!?」
イケメンは自然とそんな言葉を口に出来るようになっているわけ!?
どんな教育を受ければそうなるの!?
赤い顔でわなわなしていると足元でにゃん太郎が鳴いた。
「と、とりあえず!魔法騎士団というのであれば帰る場所は同じですよね?ここにはまだ魔獣が出てくる恐れがあるわけですし、一度帰りませんか?」
「レイが帰るのなら帰る」
なんか、子犬に懐かれた気分……。
にゃん太郎を抱えてお城に戻るとシオンさんを見た魔法騎士団の人達が泣きそうになりながらシオンさんに駆け寄った。
「シオンさん!!」
「シオンさんだ……!シオンさんが生きてる!!」
「うわーん!!自分の事置いていけって言うから死んじゃったと思いましたー!!」
こうやって慕われているのを見ると、凄い人なんだなと思う。
一切笑うことは無いけど、周りの隊士達に声をかけているのを見ると、慕われてるなって。
そう思ってシオンさんを見ていると、凄い顔でこちらに近づいてくるチェイスさんと目が合った。
「レイ様!!」
「チェイスさん!?」
「何故何も言わずに出て行かれたのです!?言いましたよね!?外に出る際はお声かけくださいって!!この世界は貴女の元いた世界とは違うんです!!魔獣が存在しているんですよ!?貴女は魔力も無いのに勝手な行動して!!」
「すみませんでした!!」
頭を下げるとチェイスさんがため息をついた。
そして隊士達に取り囲まれているシオンさんを見て固まった。
「シオン……?」
「あ、森で死にかけていたシオンさんを見つけて一緒に帰って来ました」
「は……?」
「にゃん太郎がシオンさんを見つけまして、何とかしようと頑張った結果、光の綿毛がシオンさんの体に吸い込まれまして。シオンさんの怪我がなくなりました」
「光の…綿毛?」
「シオンさんいわく、どうやら私は『治癒魔法使い』という存在らしいです。体内に魔法を使う力みたいなのが無いんだって言われました。最初はシオンさんについてる妖精のオベロンとティターニアがしてるものだとばかり……」
「シオンに、オベロンとティターニア!?」
チェイスさんが頭を抱える。
それから内容を整理するようにブツブツ何かを言い出した。
その内容は聞こえなかったけど、落ち着いたチェイスさんは私を見た。
「魔力が無いのは、貴女が治癒魔法使いだったからなんですね」
「どうやらそうみたいですねー」
「この世界でも珍しい、しかも異世界からの治癒魔法使い……。貴女は、本当に間違いで呼ばれたのですか?」
「え?」
真剣な顔でそう言われて固まる。
そうは言われても分からない。
そもそも、女神召喚の儀式とやらをして女神を召喚しているのはこの世界の人達だ。
それなら女神以外の人間を召喚する事はないのではないだろうか。
だったら……
「間違いでしょうね」
「え?」
「だって私、女神様じゃないですから」
眉を寄せてそう言うとチェイスさんは目をパチパチとさせてから吹き出した。
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